AI受託開発

リユース業のAI査定システム開発事例:写真と売れた相場から価格を出す「CircleReuse」

// KEY POINTS

この記事の要点

  • 株式会社ライフストーリーズ様が2026年5月に正式リリースされたリユース業向けAI査定SaaS「CircleReuse」の開発を、当社が担当しています
  • 最大20枚の写真から商品を特定し、市場で売れた価格を調べ、買取価格と出品文までを1回の問い合わせで作ります
  • 根拠は実際に売れた価格に限り、売る側と仕入れる側の価格を分け、AIが出した価格は点検してから画面に出します
  • ライフストーリーズ様は、査定から出品データ化までの時間の目安を、半日(約4時間)から30分と公開されています

中古品の買取価格を決めるには、まず目の前の品物が何かを特定し、同じ品物がいくらで売れているかを調べる必要があります。ラベルからメーカーや型番を読み取り、ネットオークションやフリマアプリで過去の取引を探す作業は、経験のある査定担当者でも1点ごとに時間がかかるものです。この下調べをAIに任せたいというご相談が、リユースの分野でも増えてきました。

大手の買取事業者には、自社に蓄積した50万点以上の商品データを学習させたAI写真査定を発表した例があります。では、そこまでの規模の買取データがない場合、AIは何を根拠に価格を出せばよいのでしょうか。

遺品整理とリユースを手がける株式会社ライフストーリーズ様のAI査定SaaS「CircleReuse」は、商品の写真と、市場で実際に売れた価格を根拠に査定額を出します。当社はこのサービスの開発を担当しています。AIに何を調べさせ、どこに人の判断を残したかを、開発側の視点から紹介します。

CircleReuseの機能と料金

CircleReuseは、リユース事業者の査定から商品管理、出品までをひとつの流れにまとめたクラウドサービスです。ライフストーリーズ様が2026年5月1日に正式リリースされました。遺品整理や生前整理の現場で、まだ使える品物がうまく流通せずに処分されていく状況に長年向き合ってこられた経験をもとに企画されました。

AI査定では、商品の写真を最大20枚アップロードすると、AIがカテゴリ、メーカー、型番、状態を読み取ります。そのうえで市場の取引を調べ、想定販売価格とその幅、仕入れ上限、推奨買取価格を提示します。価格の根拠は日本語の説明と、参考にした取引の一覧で示されます。査定結果からは出品用のタイトル、説明文、検索タグが作られ、ネットオークションの一括出品ツールに取り込めるCSVとして書き出せます。チャットで追加の情報を伝えて見直しを依頼する再査定の機能もあります。

ライフストーリーズ様は、査定から出品データ化までにかかる時間の目安を、半日(約4時間)から30分と公開されています。料金はFreeプランの無料から、Starterプランの月額9,800円、Basicプランの月額19,800円、Proプランの月額39,800円(いずれも税別)までの4段階で、2週間の無料トライアルがあります。2026年8月には、年額プランが「デジタル化・AI導入補助金2026」の対象ITツールに登録されました。撮影から発送までを提携する就労支援施設に任せられる代行サービスも、あわせて提供されています。

AIに調べさせることと人が決めること

ライフストーリーズ様は、AI査定を意思決定の支援と位置づけ、最終判断は人が行う方針をとられています。開発でもこの方針に沿って、AIには下調べと下書きを任せ、価格の決定と真贋の見極めは担当者が行う構成にしました。

CircleReuseのAI査定の流れ。写真と商品情報を入力すると、AIが1回の問い合わせで商品の特定、実際に売れた価格の調査、価格と出品文の作成を行う。AIが出した価格は矛盾を点検して補正し、最後に担当者が根拠の取引を確かめて価格を決め、出品用のCSVに書き出す

根拠にする相場の範囲

AIには、Web検索で国内の中古市場を調べさせ、実際に取引が成立した価格を根拠にさせています。出品中の価格は売り手の希望にすぎないため、参考にする場合も確度の低い候補として扱います。候補にはそれぞれ成立価格と成立日、対象品とどれだけ近いかを付けさせ、個別の商品ページのURLも添えさせています。査定担当者は、リンク先で元の取引を確かめられます。

査定の基準日も決めました。生成AIは、日付を指示で渡さない限り、今日が何日かを正確には判断できません。そこで査定のたびに日本時間の日付を渡し、その日から遡って取引を調べさせています。

売る側と仕入れる側の価格

査定結果に並ぶ価格は、売る側の想定販売価格とその幅、仕入れる側の仕入れ上限と推奨買取価格に分かれます。想定販売価格は売れた相場にそのまま合わせ、販売手数料や送料、整備の手間、在庫として抱えるリスクは仕入れ側の価格にだけ反映させています。両方を1つの価格の中で調整させると、どの要素をどれだけ差し引いたのかが結果から読み取れなくなるためです。

AIが返した価格は、そのまま画面に出していません。推奨買取価格が仕入れ上限を超えていないか、取引の候補が見つかっているのに想定販売価格が0円になっていないかといった点を後処理で確かめ、矛盾があれば補正します。補正した場合は根拠の欄にその旨を追記し、担当者があとから経緯を追えるようにしています。

断定させない項目

写真から読み取れないことをAIに推測で埋めさせると、もっともらしい誤りが査定結果に紛れ込みます。そこで、特定できない項目は「不明」とさせ、その場合の価格は控えめに見積もらせています。出品文でも、付属品の有無や動作のように写真で確かめられない点は「要確認」として末尾にまとめさせました。真贋の判定は機能として持たず、査定結果の項目はすべて担当者が画面で書き換えられます。

技術面での判断

1回の問い合わせで出品文まで:
商品の特定から相場の調査、価格の算出、出品文の作成までは、写真と入力情報をまとめて渡す1回の問い合わせで行います。工程ごとにAIを呼び分けると、工程の間で商品の特定結果が食い違うおそれがあり、問い合わせの回数分だけ費用と待ち時間も増えるためです。

出力形式の固定:
AIの出力は、項目名と型をあらかじめ決めた形式に固定しています。価格の各項目が何を意味するかはこの形式の定義1か所に書き、AIへの指示、後処理、画面表示のいずれもそこを参照します。開発の初期はWeb検索と出力形式の固定を同時に使えなかったため、形式に合わない出力が返ったときに備えて、多段の再試行処理を設けていました。両方を併用できるようになった段階で出力形式の固定に切り替え、再試行処理は外しています。

写真はすべて高精細で渡す:
型番のラベルや傷、付属品が何枚目の写真に写っているかは、事前には分かりません。費用とのバランスから、後半の写真だけ解像度を下げて渡していた時期もありましたが、現在は最大20枚をすべて高精細のままAIに渡しています。

待ち時間の扱い:
Web検索を伴う査定は、結果が出るまでに時間がかかります。CircleReuseは出張買取の現場でスマートフォンから査定する使い方も想定しているため、査定はサーバー側の処理キューで実行し、画面を閉じても処理が続くようにしました。査定中は「画像を解析中」「市場データを検索中」のように段階と経過時間を表示しています。

再査定のチャット:
再査定では、元の査定の要約と、新しく追加された写真だけをAIに渡します。追加の情報で裏付けが得られない項目は元の値のまま残させ、変わる項目だけを提案させています。提案は、担当者がボタンで確定するまで査定結果には反映されません。

公開後のモデルの見直し

生成AIのモデルは数ヶ月ごとに新しい世代が出ます。CircleReuseでも、2026年1月からの半年あまりで査定に使うモデルを5回切り替えました。新しい世代に移したあとで前の世代に戻したこともあれば、同じ世代の軽量版に移したこともあります。新しいモデルほど査定がよくなるとは限らないため、精度、速度、1回あたりの費用の釣り合いを見て選び直しています。

ライフストーリーズ様が2026年8月に発表された上半期のアップデートでも、AIモデルの更新による査定の高速化が挙げられています。同じ発表では、組織内での査定の共有やクレジットカード決済、出品文の品質向上も紹介されており、いずれも、利用されている事業者の声を起点にライフストーリーズ様が改善を進めてこられたものです。

AI査定システムを委託する前に確かめること

AI査定の仕組みを外部に委託して作る場合、次の3点を先に確かめておくと、設計の途中で前提が崩れにくくなります。

査定の根拠にするデータ:
自社の買取・販売の実績を根拠にするのか、市場で公開されている取引価格を使うのかで、作り方が変わります。CircleReuseは幅広い事業者が使うサービスのため、市場で売れた価格をAIのWeb検索で集める方式をとりました。自社の実績が十分に蓄積されていれば、それを根拠に加えることで、自社の販路での売れ方に近い価格を出せます。

人が最終判断する項目:
価格の決定、真贋、状態の最終確認のうち、どれを人が判断するかを先に決めておくと、担当者が画面で確かめる情報と、書き換えられる範囲がはっきりします。

査定1回あたりの費用:
写真の枚数と解像度、Web検索の量によって、1回の査定でAIに支払う費用が変わります。CircleReuseがプランごとに月の査定回数の上限を設けているように、この費用は料金体系にも関わるため、想定する査定件数と1件あたりの写真の枚数を開発の初期に見積もっておく必要があります。

まとめ

AI査定を取り入れるときに最初に確かめたいのは、査定の根拠にできる価格の記録がどこにあるかです。扱う商品が市場で広く取引されていれば、自社に学習データがなくても、売れた価格を調べる方式から始められます。反対に、取引の少ない一点物や専門性の高い品物が中心であれば、市場の相場だけでは根拠が足りないため、自社の買取記録を整えるところから始めることになります。どちらの場合も、価格の決定や真贋の見極めのように人が責任を持つ項目を先に決めておくと、AIに任せる範囲と必要な画面が定まります。

買取や査定の業務にAIを取り入れたいとお考えの方は、AI受託開発サービスのページをご覧ください。扱う商品と手元にある記録を伺ったうえで、査定の根拠をどこに置くかからご提案します。

よくある質問

Q. 自社の買取実績をAI査定に使えますか?

可能です。過去の買取価格や販売価格の記録があれば、市場の相場とあわせて査定の根拠に加えられます。記録の形式がそろっていない場合は、まず項目を整理するところから進めます。

Q. AIに真贋の判定を任せられますか?

写真だけで真贋を判定するのは、誤ったときの損失が大きく、写真では確かめられない点も多いため、CircleReuseでは機能として持たず担当者の判断に残しています。AIに任せる範囲は、商品の特定や相場の調査のように、担当者があとから根拠を確かめられる作業から決めることをおすすめします。

Q. AI査定システムの開発費用の目安を教えてください。

プロトタイプ開発は100万円以下から、本格的なサービス開発は数百万円からが目安です。範囲を伺ったうえで概算をご提示します。

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