AI受託開発

生成AIを使ったSaaS開発の事例:PR会社のAIエージェント「Promo」ができるまで

生成AIを組み込んだ自社サービスを作りたい。社内に開発者はいないが、業界で培ったノウハウはある。そうした相談が当社にも増えています。

この記事では、PR・宣伝業を約40年続けてきた有限会社デジタルシステム様が、自社のノウハウを載せたAI PRエージェント「Promo」をSaaSとして立ち上げた事例を紹介します。当社は株式会社ウイズ・ワンと共同で開発を担当しました。業界のノウハウを生成AIサービスに落とし込むときに何を決め、どう進めたのかを、開発側の視点で書いています。

Promoとは

Promo AI PRエージェント PROは、宣伝企画書とプレスリリースの作成を中心に、PR業務の一連の流れを支援するクラウドサービスです。有限会社デジタルシステム様が2026年1月26日に提供を開始し、開発を担当した当社とウイズ・ワンが共同運営に名を連ねています。

PromoがカバーするPR業務の流れ。企画・戦略立案(市場トレンド分析・ペルソナ設計・炎上リスク予測など)、プレスリリース生成(フォーマット再現・多言語出力・PDF読み取りなど)、リサーチ・効果測定(ニュース収集・AVE集計・SNS反響分析など)の3段階を一気通貫で支援し、効果測定の結果を次の企画に反映する。共通基盤として用語管理・生成履歴・組織単位の契約がある

企画の段階では、SNSやニュース、検索動向から市場トレンドを分析し、ペルソナ設計やキャンペーンシナリオの作成、炎上リスクの予測までを支援します。プレスリリースの生成では、要点を自動で抽出して本文を組み立て、Wordファイルとして出力します。PDFの企画資料や画像を読み込ませることもできます。公開後は、キーワードに関連するニュースや掲載記事を自動で収集し、広告換算値(AVE)やSNSでの反響をもとに改善提案を返します。

料金は1週間の無料トライアルのあと、スタンダードプランが月額5万円(税別)、エンタープライズプランが月額7万円(税別)からです。デジタルシステム様の発表では、プレスリリースの作成時間が約5分に短縮され、定型業務を85%削減できるとしています。

ノウハウを生成AIに載せるために決めたこと

AIに任せる範囲を先に決める

PR会社の企画書やプレスリリースには、長年の実務で固まった型があります。生成AIにそれを再現させるには、型そのものを言葉にしてAIへの指示に落とし込む必要があります。

そこで開発の初期に、機能一覧を並べる前に次の3点を整理しました。

  • 企画書やリリースの材料を、どこまで人間側で用意するか
  • AIに期待する出力の形式は何か
  • AIでできること、できないことの線引きをどこに置くか

この線引きを先に決めておくと、「AIが何でもやってくれる」という期待と実際の出力のずれを、早い段階で解消できます。生成AIを使ったサービスでは、ここが曖昧なまま進むと、完成間際に「思っていたものと違う」となりがちです。

動くものを見ながら要件を固める

要件定義に何ヶ月もかける進め方はとりませんでした。早い段階で動くプロトタイプを用意し、PRの実務を知るクライアントに実際に触ってもらいながら要件を固めていきました。

画面を触ると、要望は一気に具体的になります。取り込みたいファイルの形式、入力途中の操作性、出力の体裁。どれも仕様書の文章だけでは出てこないものです。生成AIの出力は触ってみるまで良し悪しを判断しにくいため、この進め方はとくに効果がありました。

現場の要望を差別化機能にする

提供開始から1ヶ月後の2026年2月25日に、Promoは大型アップデートを公開しています。柱になったのは、企業ごとのプレスリリースフォーマットの自動再現と、日本語・英語・韓国語・中国語の多言語出力でした。

プレスリリースには会社ごとに決まった体裁があり、AIが生成した本文をそこに流し込む手間が残っていました。フォーマット再現は、その最後のひと手間をなくす機能です。組織ごとの表記ルールを登録し、社名や製品名の書き方をAIに守らせる用語管理も、同じ発想から生まれました。

どれも、PRの実務を知るクライアントと開発側が継続的に話していたからこそ出てきた要望です。技術的に難しいわけではありませんが、開発側だけでは思いつきません。業界のノウハウを持つ側が開発に時間を割くことが、そのままサービスの差別化につながります。

技術面での判断

構成は次のとおりです。

Promoのシステム構成。ブラウザからCloudflare Workers上のアプリケーションにアクセスし、本文生成と分析はOpenAI、スライド生成はAnthropicのモデルが担当。データベースはTurso、決済はStripe、効果測定はYouTubeとXのAPIを利用し、WordとPowerPointのファイルを出力する

固定費を抑えて始める。 アプリケーションはCloudflare Workers、データベースはTurso(libSQL)で動かしています。どちらも利用量に応じた課金で、契約数が少ない立ち上げ期にサーバー費用がほとんどかからず、伸びたときには自動で追従します。SaaSは売上が立つ前にコストが先行するため、この構成はサービスを立ち上げる側の負担を抑えるうえで重要でした。

用途ごとにAIを使い分ける。 プレスリリースや企画書の本文生成と分析レポートはOpenAIのGPT-5.6に任せ、Web検索で参考情報を集めながら出典つきで生成します。検索キーワードの生成のような軽い処理には同じシリーズの小型モデルを使い、コストと速度のバランスをとっています。企画書をスライドに変換してPowerPointファイルを作る処理は、レイアウト生成の得意なAnthropicのClaudeを使っています。生成中の文章は順次画面に表示し、待ち時間の体感を減らしました。

法人向けの決済と認証に対応する。 Stripeで組織単位の課金を組み、カード払いに加えて請求書払いに対応しました。法人の場合、請求書でなければ稟議が通らないケースが多いためです。認証はパスキーを必須にし、パスワードの使い回しによる不正ログインを防いでいます。

外部AIに送るデータを限定する。 機能ごとにAIへ送信する項目を最小限にし、通信はすべて暗号化しています。OpenAIもAnthropicも、業務向けAPI経由のデータは原則としてモデルの学習に使わない方針を公開しており、その点も含めて、どの機能でどのデータが外部AIに送られるかを一覧にした説明資料を用意しました。導入検討の際に情報システム部門から必ず聞かれる項目なので、先に整理しておくと商談が早く進みます。

SaaSを受託で作るときに押さえておきたいこと

生成AIを使ったサービスを外部に開発委託する際に、先に決めておいた方がよいことが3つあります。

料金体系は開発と同時に決めることです。無料トライアルの期間、プランごとの機能差、キャンペーン価格からの移行といった課金の仕様は、そのまま実装対象になります。リリース直前に決めると、決済まわりの作り直しが発生します。

リリース後の運用も想定しておくことです。生成AIのモデルは数ヶ月単位で新しくなり、Promoでも提供開始からの半年で本文生成とスライド生成のモデルをそれぞれ新しい世代に切り替えました。入れ替えのたびに出力の確認が要ります。問い合わせ対応や不正利用への対策も含め、公開後に誰が何を見るのかを決めておく必要があります。

そして、ノウハウを持つ人が開発に時間を割くことです。Promoの差別化機能は、PRの実務を知る側が要望を出し続けたから生まれました。開発を丸投げにすると、技術的には正しくても業界の人が使いたくならないものができあがります。

まとめ

Promoは、PR会社のノウハウと生成AIを組み合わせたサービスです。AIに任せる範囲を最初に決め、動くものを見ながら要件を固め、固定費のかからない構成を選んだことで、業界のノウハウをそのまま載せたサービスとして立ち上げることができました。

自社の業務ノウハウを生成AIサービスにしたい、あるいは既存事業にAI機能を加えたいとお考えの方は、AI受託開発サービスのページをご覧ください。用途の整理から開発、運用まで一貫して対応しています。

よくある質問

Q. 生成AIを使ったサービスの開発期間はどのくらいですか?

機能の範囲によって変わりますが、まず動くプロトタイプを1〜2ヶ月で作り、触りながら本開発に進む形をおすすめしています。課金や認証を含む本格的なSaaSでも、半年程度で提供開始まで到達できます。

Q. 開発費用の目安を教えてください。

プロトタイプ開発は100万円以下から、本格的なサービス開発は数百万円からが目安です。Promoのように課金や認証を含む本格的なSaaSは後者にあたります。範囲を伺ったうえで概算をご提示します。

Q. 自社のノウハウをAIに反映できますか?

できます。Promoでは実際の企画書やプレスリリースの型を生成の指示に反映し、さらに用語管理で組織ごとの表記ルールを守らせています。ノウハウが文書や過去の成果物として残っていれば、それが出発点になります。

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