システムの移行やモダナイゼーションを進めると決めて依頼先を探し始めると、大手SIerの移行サービス、変換ツールの製品、AIで仕様書を作るサービス、クラウド移行の支援と、性質の違うものが同じ検索結果に並びます。比較サイトの一覧も会社の特徴で並べたものが多く、自社がまずどの種類のサービスを探せばよいのかは、見えにくいケースも多いのではないでしょうか。
この記事では、移行やモダナイゼーションに関わるサービスを4つに分類し、移したいシステムと頼みたいことの2点から、自社に合う分類を見極める方法を説明します。サービスの傾向や料金の公開状況は、当社が2026年9月に公式サイトで提供内容を確認した約120社をもとにしています。個別の会社を比較する前に、探す対象を絞り込むための地図としてお使いください。
マイグレーション・モダナイゼーション系サービスの分類
マイグレーション・モダナイゼーション系のサービスは、次の4つに分かれます。
| 分類 | 頼めること | 主な依頼先 |
|---|---|---|
| A. パッケージの移行・乗り換え | SAPなどのERPや業務パッケージを、新しいバージョンや別の製品へ移す | パッケージの導入を手がけるSIer・コンサルティング会社 |
| B. 診断・仕様書化 | 移行の前に、今のシステムの中身・規模・費用感を明らかにする | 解析や仕様書作成の受託会社、移行サービスの入口の診断 |
| C. スクラッチ開発システムの移行 | パッケージを使わずに一から作ったシステムを、今の機能を引き継いで新しい環境・言語・フレームワークへ移す(一部の改修や機能追加を伴うケースを含む) | 大手SIer、移行を専門にする会社、開発会社 |
| D. ツール・製品と伴走支援 | 解析や変換を自社の手で進めるための道具と、その使い方の支援 | ツールのメーカー、AI活用の支援会社 |
どの分類を探すかは、2つの問いで整理できます。1つ目は移したいシステムがパッケージかスクラッチ開発か、2つ目は何を頼みたいかです。
分類はサービスの単位で、会社の単位ではありません。診断から移行まで一貫して請け負う会社も多く、当社も診断・仕様書化とスクラッチ開発システムの移行の両方を提供しています。ホスト系とオープン系が混在するシステムや、一部をパッケージに置き換える計画のように、複数の分類にまたがる案件は、各社に個別に相談することになります。
移したいシステムの種類
1つ目の問いは、移したいシステムがパッケージか、スクラッチ開発のものかです。スクラッチ開発のシステムとは、パッケージを使わずに一から作ったシステムのことで、社内で作ったものも、開発会社に依頼して作ったものも含みます。
SAPのようなERPや、CRM、グループウェアなどの業務パッケージは、自社向けに追加開発した部分を除き、製品本体のプログラムを自社で書き換えることはできません。移行の方法は、同じ製品の新しいバージョンへ移るか、別の製品やクラウドサービスへ乗り換えるかのどちらかになり、依頼先もその製品の導入を手がける会社に絞られます。これがAのパッケージの移行・乗り換えです。
スクラッチ開発のシステムは、COBOLやPL/Iで書かれたメインフレーム・オフコンのシステムと、VB・Java・PHP・.NETなどで書かれたオープン系の業務アプリに分かれます。どちらも移し方の選択肢が多く、依頼先の顔ぶれが大きく変わるため、この区分は後の節で分けて扱います。
頼みたいことの種類
スクラッチ開発のシステムでは、2つ目の問いである何を頼みたいかによって、探すサービスが変わります。
今のシステムの中身がよく分からない、仕様書が残っていない、どのくらいの費用と期間がかかるか見当がつかない、という段階なら、Bの診断・仕様書化のサービスが入口になります。今の機能の引き継ぎを基本に新しい環境や言語へ移したい場合は、移行にあわせて一部の機能を改修・追加するケースも含め、Cのスクラッチ開発システムの移行サービスが対象になります。社内にエンジニアがいて自社の手で進めたい場合は、Dのツール・製品と伴走支援の分類を見ることになります。
この機会に業務の進め方から見直してシステムを作り直したい場合は、移行サービスよりも、新規の開発を手がける会社が相談先になります。移行と作り直しの境目は後の「移し方の種類」の節で説明しています。
A. パッケージの移行・乗り換え
代表的なのはSAPの移行です。SAP Business Suite 7(SAP ERP 6.0ではEHP6〜8)の標準保守は2027年末まで、追加費用で選べる延長保守は2030年末までとされています(SAPの保守方針)。後継のSAP S/4HANAへの移行では、今の設定やデータを引き継いで移すシステムコンバージョンと、新しく導入し直す新規導入が代表的な選択肢で、必要なデータだけを選んで移す方法もあります。どの方針を取るかが最初の論点になります。このほか、Notesのような古いグループウェアをクラウドのグループウェアへ切り替える案件や、業務パッケージを別の製品やクラウドサービスへ乗り換える案件もこの分類に入ります。
パッケージの移行は、製品の知識と導入の実績が依頼先を選ぶ基準になるため、製品ごとの導入パートナーから探すのが近道です。
B. 診断・仕様書化
移行の前に、今のシステムに何があり、どう動いているのかを明らかにするサービスです。ソースコードを解析して、機能の一覧、画面やテーブルの構成、処理の流れ、使われていないコードを洗い出し、移行の難しさと概算の費用を示します。報告書で終わる診断と、仕様書として残す仕様書化があり、移行サービスの入口として無料で行われる診断もあります。
生成AIが力を発揮しやすいのがこの分類です。当社の調査では、生成AIを使ってオープン系のシステムを扱う会社23社のうち12社は、移行ではなく診断・仕様書化を主なサービスにしていました。
料金は個別見積とする会社が大半で、当社が調べた移行・仕様書化のサービス約120社全体でも、料金を金額で公開していたのは27社でした。公開している会社の中でも、行数ごとの定額を示す会社と、診断・PoC・本番と段階ごとの固定価格を示す会社に分かれます。比べるときは、提示される成果物の見本があるか、なぜその処理があるのかという業務上の意図まで文書にするのか、それともコードの構造の説明にとどまるのかを確かめると、価格の差の理由が見えてきます。
仕様書化で出せるものの範囲と費用の目安はソースコードから仕様書をAIで作成するで、自社で進めるか委託するかは仕様書の自動生成は自社でやるか委託するかで詳しく扱っています。
C. スクラッチ開発システムの移行
今の機能を引き継ぎながら、新しい環境・言語・フレームワークへ移すサービスです。移行にあわせて画面の使い勝手を整えたり、一部の機能を追加したりする案件もこの分類に含まれます。移行元がメインフレーム・オフコンか、オープン系かで、依頼先の顔ぶれと案件の規模が大きく変わります。
メインフレーム・オフコンのシステム
COBOL・PL/I・RPGなどで書かれた基幹システムの移行は、大手SIerとメインフレームのメーカー、移行を専門にする会社が中心です。自社製の変換ツールで長年の実績を持つ会社が多く、規模の大きな基幹システムでは案件が数年がかりになることも珍しくありません。
オープン系の業務アプリ
VB・Java・PHP・.NET・Accessなどで書かれた業務アプリの移行は、依頼先の幅が最も広い分類です。大手SIerのほか、特定の言語に絞った変換ツールを持つ会社、生成AIで変換する会社、開発会社が並びます。対応できる言語やフレームワークは会社ごとに異なるため、自社のシステムと同じ組み合わせの実績があるかを最初に確かめておく必要があります。サポートが終了したフレームワークの移行先の選び方の一例として、CakePHP 2、Seasar2、FuelPHPの記事もご覧ください。
移し方の種類
移行の方法は、どこまで作り変えるかで分かれます。
| 移し方 | 内容 |
|---|---|
| リホスト | プログラムはそのままで、動かす環境だけを載せ替える |
| リライト | 処理の中身を引き継いだまま、新しい言語やフレームワークに書き換える |
| リビルド | 業務の進め方から見直し、システムを作り直す |
| リテイン | 今のシステムを動かし続け、データ連携などで補う |
移し方の分け方には決まった定義がなく、会社や資料によって数や呼び名が異なります。たとえばAWSは、クラウドへの移行について、環境を載せ替えながら一部を最適化するリプラットフォームや、構造から作り変えるリファクタリングなどを加えた7つの移行戦略を示しています。この記事では、国内の移行サービスでよく使われる4つで説明しています。
水平移行と呼ばれるのはリホストとリライトで、移行サービスの多くはこの2つを扱います。今の機能の引き継ぎを基本としながら、画面の使い勝手の調整や一部の機能追加をあわせて進めるケースも少なくありません。リビルドは新規の開発に近く、今のシステムを作った会社や、新規開発を手がける会社が担うことが多い方法です。リホストのうち、サーバーやOSをクラウドへ載せ替える作業は、クラウドの構築を手がける会社が専門のサービスとして請け負っていることもあります。
4つの移し方のどれが合うかは、システムの規模、業務の進め方を見直すかどうか、移行にかけられる期間によって変わります。依頼先の診断を受けて決めることも多いため、最初から1つに決めておく必要はありません。
変換の手段と生成AI
リライトの変換は、決まった規則で置き換える変換ツール、生成AI、人の手作業を組み合わせて進めます。変換ツールは対応する言語の組み合わせでは速く正確ですが、対応していない組み合わせには使えません。生成AIは対応する言語の幅が広く、仕様書がない場合も扱いやすい一方で、出力をそのまま使えるとは限らず、人による確認と修正が前提になります。当社の調査では、従来型の移行サービスの多くは変換ツールか人の手作業で進めており、移行に生成AIを使うと公式サイトに書いている会社はまだ一部でした。AIを使う移行の仕組みと注意点はAIマイグレーションとはにまとめています。
D. ツール・製品と伴走支援
解析や変換を自社の手で進めるための分類です。ソースコードを解析して構成図や設計書を出すツール、コードの変換を支援するAIエージェント、社内のエンジニアがAIを使って解析や変換を進められるように環境づくりと使い方を支援するサービスがあります。
移行は専門の会社に作業を任せる形が多く選ばれていますが、ツールや伴走支援が候補になるのは、社内に移行元の言語を読めるエンジニアがいて作業の時間を確保できる場合や、移行のノウハウを社内に残したい場合です。
伴走支援は、ツールの利用料と別に月額の支援料がかかる形が多く、自社の手で進める分の工数も必要です。依頼先に任せる場合と比べるときは、社内のエンジニアの工数も費用に含めて考える必要があります。
当社のサービスの位置づけ
当社のサービスは、4つの分類のうちBの診断・仕様書化と、Cのスクラッチ開発システムの移行にあたります。Aのパッケージの移行・乗り換えと、Dのうちツール・製品の提供は行っていません。
| 分類 | 当社のサービス | 主な対象 |
|---|---|---|
| B. 診断・仕様書化 | AI仕様書作成 | PHP・Java・C#・VB・Accessなどのオープン系を中心とした業務システム |
| C. スクラッチ開発システムの移行 | AIマイグレーション | FuelPHP・CakePHP・Struts・Seasar2・VB・Accessなどオープン系のレガシーシステム。言語やフレームワークの変更、バージョンアップ、DBの移行 |
移行では、マイグレーション専用に開発したAIエージェントによるコード変換と、エンジニアによる検証を組み合わせて進めます。移し方の種類でいえば、今の機能を引き継いで言語やフレームワークを書き換えるリライトが中心です。約25万行の基幹システムを移行した当社の実績案件では、従来手法の見積と比べて金額・工期を約60%削減しました。移行と同時にコードから仕様書を作成して納品するため、移行後の保守の引き継ぎにも活用できます。メインフレーム系の移行や、業務の見直しを伴う全面的な作り直しは、個別のご相談として承っています。
まとめ
依頼先を探す前に、まず移したいシステムがパッケージかスクラッチ開発かを切り分けてください。スクラッチ開発なら、中身を知るところから始めたいのか、移行を任せたいのか、自社の手で進めたいのかを整理しておくと、探すサービスの分類を1つに絞れます。中身や費用感がまだ分からない段階なら診断・仕様書化から、移し方まで決まっているなら移行サービスから探し始めるのが近道です。
診断の段階で複数の会社に同じソースコードを見てもらうと、移し方の提案と見積を同じ条件で並べられます。その際は、診断の結果が自社の手元に残るか、他社との比較に使えるかを事前に確かめておくと、後の判断がしやすくなります。
オープン系の業務アプリの移行を検討していて、自社のシステムでどのくらいの費用と期間がかかるかを知りたい場合は、当社のAIマイグレーションの無料診断をご利用ください。ソースコードをAIで解析し、移行の難しさと概算の費用・期間、移行先の候補をご提示しています。
よくある質問
Q. マイグレーションとモダナイゼーションはどう違いますか?
使う会社によって意味の幅が異なります。マイグレーションは今の機能のまま別の環境や言語へ移すことを指す場合が多く、モダナイゼーションは作り直しや業務の見直しまで含めた広い意味で使われることが多い言葉です。依頼先と話すときは言葉よりも、この記事の「移し方の種類」の節にあるどの方法を指しているかを確かめると、認識の違いを防げます。
Q. どの分類か判断できない場合は、どこに相談すればよいですか?
スクラッチ開発のシステムであれば、診断・仕様書化のサービスか、移行サービスの入口の診断に相談するのが確実です。システムの中身が分かると、移し方と依頼先の候補も絞れます。パッケージかどうかも分からない場合は、今のシステムの保守を担当している会社に、使っている製品名と、自社向けに追加開発した部分があるかを確認してみてください。
Q. スクラッチ開発のシステムをパッケージやクラウドサービスに置き換える場合は、どの分類ですか?
移し方の種類ではリビルドに近く、置き換え先の製品の導入を手がける会社が主な相談先になります。ただし、今のシステムにどのような機能があり、どのデータを移す必要があるかを洗い出す作業は、置き換え先の製品が決まる前に必要です。この洗い出しには、診断・仕様書化のサービスを使うこともできます。